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山伏に化けて、ふしぎな酒を — 源頼光の大江山鬼退治

日本でいちばん名高い鬼退治の話は、じつは「力くらべ」の話ではありません。大江山の鬼の頭領・酒呑童子を倒した源頼光(みなもとのらいこう)の一行は、身分をかくして鬼の宴にまぎれこみ、ふしぎな酒で鬼を酔わせたと語られます。酒好きの鬼が、酒で敗れる。この物語のいちばんの見どころは、そこにあります。
都から人が消えていく
物語は、都で若い姫君や人々が次々と姿を消すところから始まります。占いによって、大江山にすむ鬼のしわざだとわかり、退治を命じられたのが、武勇で知られた源頼光でした。
頼光のもとには、「四天王」と呼ばれる四人の家来がいました。渡辺綱(わたなべのつな)、坂田金時(さかたのきんとき)、碓井貞光(うすいさだみつ)、卜部季武(うらべのすえたけ)です。このうち坂田金時は、昔話の金太郎が大人になった姿とされています。足柄山でくまと相撲をとっていたあの子が、のちに鬼退治の一行に加わっていた、というわけです。
山伏に化けて、鬼の宴へ
鬼のすみかは険しい山の奥。まともに攻めこんでも勝ち目はありません。そこで一行は、山で修行する山伏(やまぶし)の姿に身をやつして、道に迷った旅の者として大江山に入ったといわれます。
道中、一行は神さまの化身とされる老人たちに出会い、ふしぎな酒を授かります。人が飲めば薬になり、鬼が飲めば力を失うという酒で、「神便鬼毒酒(じんべんきどくしゅ)」と呼ばれています。
鬼の御殿にたどりついた一行を、酒呑童子は客としてもてなし、酒盛りが始まります。頼光たちがすすめた酒を、大の酒好きの童子は気持ちよく飲みほし、やがて深く眠りこんでしまいました。
首だけになっても
眠った童子に、一行は隠し持っていた鎧兜を身につけて斬りかかります。首を落とされた酒呑童子は、それでも首だけで宙を舞い、頼光の兜にかみついた、と語られます。頼光は神さまから授かった兜をかぶっていたおかげで助かった、という話が知られています。
そしてこの場面には、鬼の側の言い分も残っています。能『大江山』などでは、だまされたと知った童子が、鬼はうそをつかないのに、だましうちをするとは、と嘆く場面があるといわれます。都の人々にとっては恐ろしい鬼でも、物語は鬼の悔しさにも、そっと耳をかたむけているのです。
大江山はどこにある?
酒呑童子のすみかとして広く知られているのは、京都府北部、丹後の大江山です。ただし、都の西のはずれ、老ノ坂(おいのさか)峠のあたりの大枝山(おおえやま)こそが物語の舞台だ、とする説もあり、どちらと決めきれない話になっています。
老ノ坂には、頼光たちが首を都へ運ぶ途中、首がそこから動かなくなったので葬った、という言い伝えとともに、首塚がまつられています。
酒呑童子のこれまでの話や、右腕とされた茨木童子のことは、図鑑の酒呑童子のページへ。昔話や地獄の鬼など、鬼そのもののことは図鑑の鬼のページにまとめています。