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宇和島の牛鬼は、海辺の妖怪とは別もの? — 伝承の牛鬼と祭りの牛鬼

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牛鬼

「牛鬼」と聞いて、愛媛県の宇和島を思い浮かべる人もいるかもしれません。宇和島の祭りには、長い首を振りながら町をのし歩く、大きな牛鬼が登場します。けれど、この祭りの牛鬼と、海辺に現れて人を襲う伝承の牛鬼は、同じ名前でも役目が正反対。片方は出会ってはいけないこわいもの、もう片方は、そのこわさで悪いものを追い払ってくれる魔よけです。ふたつの牛鬼を、分けて見ていきましょう。

伝承の牛鬼 — 夜の海辺のこわいもの

まずは、妖怪としての牛鬼です。牛鬼の話は、近畿・中国・四国・九州など、西日本の海辺に広く伝わっています。牛の頭に鬼のような体、あるいは蜘蛛のような脚をもつといわれ、夜の浜や岩場に現れて人を襲うと語られてきました。

伝承の牛鬼は、あくまで「出会ってはいけない相手」です。海辺で赤ん坊を抱いた女に声をかけられたら気をつけろ、という「濡れ女」とのこわい話も残っていて、くわしくは図鑑の牛鬼のページにまとめています。土地によっては、海ではなく山の淵や滝に棲むともいわれ、地名にその名を残しているところもあります。

宇和島の牛鬼は、人がかつぐ「練り物」

いっぽう、愛媛県の宇和島を中心とした南予地方では、祭りに牛鬼が登場します。こちらは生き物でも妖怪でもなく、大勢の人がかついで動かす「練り物」です。

竹などで組んだ大きな胴体を、棕櫚(しゅろ)の毛や布でおおい、長い首の先には、角の生えた鬼のような顔の頭がつきます。うしろには、剣のような形の尾。人々は胴の下に入ってかつぎ、首を高く持ち上げたり、ぐるりと振り回したりしながら、町を練り歩きます。

南予のあちこちの祭りに牛鬼が出るので、顔つきや色は土地ごとに少しずつちがうといわれています。自分の町の牛鬼に愛着をもつ人も多いようです。

こわい姿だから、魔よけになる

祭りの牛鬼の役目は、悪いものを追い払うこと。町をまわりながら、わざわいを払っていくものとして親しまれています。

こわい姿のものに、悪いものを追い払ってもらう。この考え方は、日本のあちこちで見られます。たとえば屋根の鬼瓦は、鬼のこわい顔で家をわざわいから守るものとされてきました。牛鬼の練り物も、その迫力があるからこそ、町を守る役目を任されているのかもしれません。

ただ、祭りに牛鬼が登場するようになったはじまりについては、いくつかの説があり、はっきりとはわかっていません。伝承の牛鬼と祭りの牛鬼がどこかでつながっているのかどうかも、決まった答えはないのです。

ふたつの牛鬼の見分け方

最後に、ふたつの牛鬼をくらべてみましょう。

  • 伝承の牛鬼:夜の海辺や淵に現れる妖怪。人を襲う、出会ってはいけない相手。牛の頭に、鬼や蜘蛛のような体
  • 祭りの牛鬼:祭りのときに、人がかついで町を練り歩く練り物。悪いものを追い払う魔よけ。長い首と、剣のような尾をもつ

同じ名前、似たようなこわい顔でも、片方は「こわいもの」、もう片方は「こわさで守ってくれるもの」。ピクセル妖怪の妖怪マップでは、牛鬼は愛媛のところに顔を出しています。