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ガジュマルの木の隣人 — キジムナーと人の付き合いかた

キジムナーの話をたどっていくと、こわい場面よりも、人とのお付き合いの話がたくさん出てきます。いっしょに漁に出たり、ちょっとしたことで仲たがいしたり。沖縄で語り継がれてきたキジムナーは、遠くから恐れられる妖怪というより、すぐ近くの木に住む「隣人」のような存在です。
ガジュマルという木
キジムナーの住みかとしてよく語られるのが、ガジュマルの木です。沖縄では庭先や道ばたなど、暮らしのすぐそばで見かける大きな木で、枝から「気根(きこん)」と呼ばれる細い根をたくさん垂らすのが特徴です。気根が地面に届くと太くなり、やがて幹のようになって、木全体がからみあった不思議な姿になっていきます。
もじゃもじゃと根を垂らし、昼でも木陰が深いガジュマルの古木。そこに何かが住んでいると考えたくなる気持ちは、実際にその木を見上げてみると、なんとなくわかる気がします。キジムナーのぼさぼさの赤い髪も、どこかガジュマルの姿と重なって見えてきます。
友だちになると、海へ
キジムナーと仲よくなった人の話として、よく語られるのが漁の話です。キジムナーは魚とりがとても上手で、友だちになった人を海へ誘い、たくさんの魚をとらせてくれるといわれています。
おもしろいのは、その分け前です。キジムナーが欲しがるのは魚の目玉だけで、残りはぜんぶ人間のもの。目玉だけで満足するという欲のなさも、どこか子どもらしくてほほえましいところです。キジムナーと付き合う家は、おかげで暮らしが豊かになった、という話も残っています。木の上の小さな友だちが、海の恵みを運んできてくれる。沖縄の海と森が、ひとつの話の中でつながっているのも印象的です。
縁が切れるとき
ただ、キジムナーとの付き合いが、いつまでも続くとはかぎりません。毎晩のように誘われるのに疲れた人が、キジムナーの苦手なタコを使って追い払ったり、住んでいる木を傷つけたりした。するとキジムナーは二度と姿を見せなくなり、それからその家の暮らしは傾いていった——そんな話も伝わっています。
ここで語られているのは、キジムナーの恐ろしさというより、一度結んだ縁を大切にしなかったことへの戒めのようにも読めます。住みかの木を大事にすること、相手の嫌がることをしないこと。人と人との付き合いにも通じる教えが、キジムナーの話にはこめられています。
座敷童子とのふしぎな共通点
子どもの姿をしていて、いっしょにいる家を豊かにし、去ってしまうと家が傾く。この流れは、東北の座敷童子の言い伝えとよく似ています。遠くはなれた土地で、似た形の話が語られてきたのは興味深いところです。
いっぽうで、座敷童子が家の奥の座敷にいるのに対して、キジムナーは外の木に住み、海へも出かけていきます。家の中の子どもと、木と海の子ども。くらべてみると、それぞれの土地の暮らしが見えてきます。キジムナーの姿や好き嫌いについては、図鑑のキジムナーのページにまとめています。大きな木を見かけたら、ちょっと見上げてあいさつしてみてください。