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見上げ入道、次第高 — 呼び名と「消し方」でたどる見越し入道

見越し入道のいちばん面白いところは、こわさよりも「消し方」にあるのかもしれません。見上げるほど大きくなる坊主は、ちょっとしたひと言や、目の動かし方ひとつで、あっけなく消えてしまうと語られてきました。土地ごとの呼び名とあわせてたどってみると、昔の人が夜道の大きな影とどうつきあってきたかが見えてきます。
土地によって変わる名前
見上げるほど背が伸びる坊主の話は、全国に残っています。そのぶん、呼び名もいろいろです。
- 見上げ入道:新潟県の佐渡などで伝わる呼び名。名前のとおり、見上げるほど大きくなります
- 次第高(しだいだか):中国地方で語られる呼び名。「次第に高くなる」という、そのままの名前です
- 高坊主・伸び上がり:背の高い坊主の姿や、ぐんぐん伸びあがるようすを、そのまま名前にしたもの
名前はちがっても、話の骨組みはよく似ています。夜、人気のない道に、だれかが立っている。見上げると、大きくなる。どの名前にも「見上げる」「高くなる」という動きが入っているのは、この妖怪のこわさが、なによりもまず「見上げる」ことにあったからなのでしょう。
ひと言で消える妖怪
見越し入道の話でよく語られるのが、正体を言い当てるひと言です。「見越した」「見抜いたぞ」と声をかけると消える、という言い伝えが各地にあります。佐渡の見上げ入道にも、「見上げ入道、見越した」と唱えると消える、という話が残っています。
反対に、こわがってぼうっと見上げつづけていると、相手はどんどん大きくなり、しまいには後ろへひっくり返ってしまう、ともいわれます。相手のペースに巻きこまれず、「おまえのことはわかっているぞ」と先に言ってしまう。妖怪とのやりとりというより、どこか度胸だめしのような話です。
見下ろせば、小さくなる
もうひとつ面白いのが、目の動かし方についての言い伝えです。足もとから頭へと見上げていくと大きくなるけれど、反対に、頭のほうから足もとへと目を下ろしていくと小さくなる、という話もあります。
見上げると高くなり、見下ろすと低くなる。「次第高」という名前は、まさにこの性質をいいあてたものといえそうです。こちらが下から見上げるかぎり、相手はどこまでも大きくなる。けれど、こちらが「上から」見てしまえば、相手はふつうの大きさにもどってしまう。こわいものに出会ったときの心の持ちようを、そのまま妖怪の話にしたような言い伝えです。
夜道の大きな影
昔の夜道を照らすのは、手に持った提灯の明かりくらいでした。足もとは明るくても、その先や上のほうは暗いまま。前に立つ人影を見上げれば、頭のあたりは闇にとけて、どこまで続いているのかわからなかったかもしれません。見越し入道の話は、そんな夜道の心細さから生まれたのかもしれない、と想像してみるのも楽しいところです。
はじめから山のように大きい巨人のダイダラボッチとちがい、見越し入道は「見ているうちに」大きくなります。正体を狸とする話も多いので、化け狸の化けくらべの話と並べて読むのもおすすめです。見越し入道の姿と言い伝えは、図鑑の見越し入道のページにまとめています。