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釣瓶ってなに? 井戸の道具から名前をもらった妖怪・釣瓶落とし

釣瓶落としの名前を聞いて、「釣瓶」がなにかすぐ思い浮かぶ人は、いまでは少ないかもしれません。釣瓶は、井戸の水をくみ上げるための桶のこと。この妖怪は、暮らしの道具の動きそのものから名前をもらっているのです。井戸のある暮らしを思い浮かべると、釣瓶落としのこわさがぐっと身近になります。
釣瓶は、井戸の水をくむ桶
水道がなかったころ、多くの家や村では井戸から水をくんでいました。そのとき使うのが釣瓶です。縄の先に桶をつけて井戸の中へ下ろし、水を入れて引き上げます。
井戸の上に滑車をつけ、縄の両はしに桶をつけて、片方を下ろすともう片方が上がってくるしくみもよく使われました。長い竿の先に桶を下げ、てこのように動かす「はねつるべ」というしかけもあります。
どのしくみでも、桶を下ろすときは手をゆるめれば、すとんとまっすぐ落ちていきます。この「まっすぐ、速く落ちる」動きこそが、釣瓶落としの名前のもとだといわれています。
「秋の日は釣瓶落とし」
同じ動きは、妖怪とは関係のないことばにも残っています。「秋の日は釣瓶落とし」。秋になると、日が沈みはじめてから暗くなるまでがあっという間だ、という意味のことわざです。
井戸に落ちていく桶のように、夕日がすとんと山の向こうへ消えてしまう。昔の人にとって釣瓶の落ちる速さは、それだけ見慣れた、わかりやすいものだったのでしょう。妖怪の名前を聞いた人も、きっと「上からいきなり、すとんと来る」ようすをすぐに思い浮かべたはずです。
大きな木の上という居場所
釣瓶落としが潜んでいるのは、村はずれや山道に立つ大きな木の上だと語られます。昼間なら日かげをつくってくれる木も、夜になると、こずえの上はまっ暗でなにも見えません。
そこを通りかかると、上から大きな首がどすんと落ちてくる。人を驚かせたり、つかまえて引き上げたりして、またするすると木の上へ戻っていく、という話が伝わっています。土地によっては、首ではなく火の玉のような姿で語られることもあるといわれます。
高い木の上は、昔から人の目が届かない、ふしぎなものが宿る場所だと考えられてきました。暗い夜道で頭の上を気にしながら歩いた人々の気持ちが、この妖怪を生んだのかもしれません。
ろくろ首とのちがい
首の妖怪というと、ろくろ首を思い出す人も多いでしょう。けれど、この二つはまったくちがう妖怪です。
ろくろ首は、昼間はふつうの人として暮らしていて、夜になると首が伸びたり、首が抜けて飛んでいったりします。もとは「人」なのです。いっぽう釣瓶落としは、木の上に潜んでいて、上から落ちてくる首そのものとして語られます。絵に描かれるときも、髪をふり乱した大きな首だけの姿がおなじみです。
「人の首が伸びる」ろくろ首と、「首が落ちてくる」釣瓶落とし。こわさの向きが、横と縦でちがうと考えるとおもしろいかもしれません。釣瓶落としの言い伝えは図鑑の釣瓶落としのページにまとめています。