No.074
隠神刑部
INUGAMIGYOBU

◆ でんしょう
伊予の国(いまの愛媛県)の松山には、八百八匹の狸を従えた総大将がいたと伝わります。それが隠神刑部です。四国の狸のなかでも指折りの古狸で、もとは松山の城とその土地を守っていた、という話もあります。「刑部」はむかしの役人の位をあらわすことば。狸でありながら、いかめしい肩書きを名のっていたわけです。
ところが江戸時代、松山藩でお家騒動が起こると、刑部は悪だくみをする者の側についてしまったといわれています。八百八狸を率いて城を化かし、騒がせたものの、やがてこらしめられ、狸たちとともに山の岩屋へ封じこめられた――。この話は講談や読み物になって広く知られ、四国の狸の親分といえばまずこの名が挙がるほどになりました。