No.069
送り犬
OKURIINU


『狂歌百物語』より「送狼(おくりおおかみ)」
パブリックドメイン(Wikimedia Commons)
◆ でんしょう
夜の山道をひとりで歩いていると、後ろからひたひたとついてくる犬がいる――そんな言い伝えが、各地の山あいに残っています。こちらが立ち止まれば止まり、歩きだせばまたついてくる。そして、もし道で転んでしまうと、とたんに襲いかかってくるといわれています。けれども、転んでしまっても「どっこいしょ」とひと休みしたふりをすれば、送り犬は襲ってこないのだとか。
無事に家まで帰り着いたら、「送ってくれてありがとう」とお礼を言うと、送り犬は山へ帰っていく、という話もあります。ほかの獣から人を守るためについてきていたのだ、と語る土地もあり、こわいだけの存在ではありません。地方によっては「送り狼」とも呼ばれ、かつて日本の山にいたニホンオオカミへの畏れと敬いが、この妖怪に重なっているとみられています。