No.055
両面宿儺
RYOMEN-SUKUNA

◆ でんしょう
『日本書紀』には、仁徳天皇の時代のこととして、飛騨に宿儺という者がいたと書かれています。ひとつの体に二つの顔が背中合わせについていて、手足もそれぞれにあり、力が強く身軽だったといいます。四本の手で剣と弓矢をあやつり、朝廷の命令に従わず人々から奪っていたため、遣わされた武将に討たれた――都の記録のなかの宿儺は、恐ろしい怪人です。
ところが、ふるさとの飛騨では、まったく別の顔で語られてきました。高山市丹生川町の千光寺は、両面宿儺が開いたと伝わる寺です。悪い竜を退治して人々を助けた、という話も残り、宿儺は土地を守った英雄、寺のはじまりにかかわる祖として大切にされてきました。ひとつの名前に、正反対の二つの顔。それが両面宿儺という存在のいちばんのふしぎです。